俺が起きたのは夕方だったらしい。
ジョンと遊びつかれた頃には日が完全に沈み、外は真っ暗になっていた。
じっとしているのは嫌だったので、シャワーを浴びることにした。
風呂を使っていいと言われていたが、溜めるのは面倒だったのでシャワーだけで済ました。
脱衣所にはタオルと一緒に着替えも置いてあったので有り難く借りたが、シャツもズボンも丈が余ってしまう。
そういえば、湊さんは背が高かった。
動き辛いしやることもないので、またベッドに戻るとすかさずジョンが寄り添ってきた。
ジョンを撫でながら改めて部屋を眺め回してみた。
このやたらと広く、豪華な部屋には生活感があまりない。
まるでドラマの金持ちが住んでいる高級マンションのようだ。
周りの小物もきっと高いものだろう。
ヘタに触って壊すわけにも行かない。
大人しく待って居たほうがいいのだろう。
しかしジョンとも遊び疲れたし、やることがなくなってしまった。
暇を意識した途端に空腹感が沸いてくる。
部屋の隅にある小さな冷蔵庫を開けてみようか迷う。

「おなかすいたー。」

ジョンに言っても意味がない。
そして今更だが、そもそもここに居ていいのだろうか。
知らないうちに拉致され、輪姦され、気づいたらここに居た。
よく知りもしない人間の部屋で、犬と戯れていていいのだろうか。
逃げた方がいいのだろうか。あの、湊という男は信用できるのだろうか。
どうするべきか考えていると突然、こんこんっとノックの音がした。

「失礼しますー。」

ハスキーな声とともに金髪の女の子が入ってきた。
女の子は少しゴスロリ調のひざ丈ワンピースを着ている。
華美な服装に負けず、顔もメイクをしっかりしていて人形のように可愛らしい。
女の子の片腕には、湯気が立つ料理の乗ったトレーが乗せられていた。

「やっと起きたんだって?ご飯食べれそう?」

「あ、えと・・・うん食べる!」

女の子の可愛さに見惚れていたせいで、少し慌てた口調になってしまった。

「そんなにお腹すいてたの?」

女の子はクスクスと笑いながらトレーをベッドに座っているアキラの膝に乗せた。
一緒にベッドに居たジョンはトレーを覗き込み、続いてアキラと女の子の顔を順に見つめている。

「ジョンも食べたいの?」

「これはジョンのじゃないよ。ちょっと待ってな」

女の子はジョンの頭を撫でてから、部屋の奥にあるカウンターキッチンの向こうへと一度消えると、大きな器にドッグフードを入れて戻ってきた。
女の子が戻ってくると、ジョンはベッドから降りてベッド横に水入れの前にピシッと"おすわり"をした。
女の子はそれを確認してからドッグフードを置いた。

「"よし"ったべていいよ!」

女の子の掛け声に合わせて、ジョンは勢い良く食べ始めた。

「ちゃんと躾けられてんだね。」

「そりゃあね、こんなでかい犬躾けられてなきゃ大変だろ?それより・・・」

「・・・何?」

「あんたは食べないの?"よし"って言ってあげたほうがいい?」

アキラはハッとしてそうしていただきますと手を合わせてから食べ始めた。
女の子は勢い良く食べる一人と一匹をニコニコと見つめていた。




 

 

 

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